「節税の亡霊」と化した保険営業 ―― 両替機投資・太陽光・倉庫・謎の節税案件に走る“全損保険マン”の末路 ――

■ 総論:終わらない節税幻想

全損・半損保険の規制強化によって、かつて「節税保険」と呼ばれた商品は市場から姿を消した。
だが、営業の現場では依然として「節税したい」という中小企業オーナーの欲求が残り続けている。

その結果、保険の看板を失った元営業マンたちは、節税という言葉だけを残して別の商品を売り始めた。
両替機、コインランドリー、太陽光パネル、無人販売機、倉庫投資、マイニング機器――
もはや金融とも保険とも無関係な“節税グッズ”が、次々と登場している。

それらの多くは「減価償却を使えば節税になる」「法人で買えば税金が戻る」というロジックを掲げる。
だがその実態は、税務効果が限定的で、経済合理性のない節税ごっこにすぎない。

  • 保険崩壊後に生まれた“節税難民ビジネス”
  • 本業と無関係な投資の危うさ
  • 税制と営業のイタチごっこ
  • 営業の論理と顧客の依存
  • 本来の節税とは何か

保険崩壊後に生まれた“節税難民ビジネス”

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全損・半損保険が国税から否認された2019年以降、業界は一時的に凍りついた。
しかし、多くの保険営業マンにとって「節税」は顧客との唯一の接点だった。
保障や資産形成ではなく、「税金が減る」「損金に落ちる」ことで契約を取ってきた営業スタイルが染みついていたのである。

結果として彼らは、保険が否認されても“節税という看板”を手放さなかった。
そこで次に目をつけたのが、減価償却を使った疑似スキーム。
• 両替機や自販機を購入 → 法人資産に計上 → 減価償却で損金算入
• コインランドリーや倉庫投資 → 初年度の設備償却で節税
• 太陽光発電 → 固定資産扱いで一括償却

営業の説明はこうだ。
「保険がダメになった今は、モノで節税する時代です」
だがそれは、**金融知識ではなく、節税依存を延命させるための“形を変えた幻想”**にすぎなかった。

本業と無関係な投資の危うさ

自分とは無関係だと思い込んでいる「宗教」、はたして本当に? | 社会・ライフ - Meiji.net(メイジネット)明治大学

本来、企業が投資や設備を行う目的は「事業拡大」や「収益性の向上」である。
しかし節税目的で導入された両替機や太陽光設備は、ほとんどが本業と無関係な資産だ。

例えば飲食店が両替機を導入するのは理解できる。
だが、医療法人や建設業が数百万円の両替機を買っても業務には使わない。
つまり、経済合理性がなく「節税目的だけの支出」になっている。

税務上は減価償却できても、現金が減る事実は変わらない。
そして、将来のキャッシュフローを犠牲にして“今だけの節税”を買っているのが実態である。

さらに、こうした投資は「節税効果を先取りして後悔する」構造を生む。
翌年度には償却資産税・維持費・収益低下などの負担が残り、結局トータルでは損失を出す企業も多い。

税制と営業のイタチごっこ

イタチごっこ | GANREF

日本の税制は常に「抜け道を塞ぐ」方向で動く。
一度スキームが流行れば、数年以内に通達や改正で封じられる。
これは節税と税務行政の宿命的なイタチごっこである。

全損保険がそうであったように、
→ 太陽光の即時償却も制度変更、
→ 医療機器リースも限定適用、
→ 所得拡大促進税制も縮小、
→ 中小企業経営強化税制も一部打ち切り。

つまり、「節税ありき」で設計された商品は、制度が変わればすぐ無価値になる。
にもかかわらず、営業マンたちは「次の節税ネタ」を探して彷徨い続ける。

この構図は、もはやビジネスではなく税制を追いかける宗教に近い。
信者(顧客)は救済を求め、伝道者(営業)は一時的な安心を売る。
だが、その信仰が続く限り、誰も経済的には豊かにならない。

営業の論理と顧客の依存

営業マンに必要な「論理的に話す能力」を理解する|ゼロから営業を学ぶ総合学習サイト 営業学

節税を売り文句にする営業は、短期的には成果が出やすい。
なぜなら「税金が減る」という言葉は、どんな経営者にとっても甘美だからだ。
しかも多くの中小企業には財務担当がいないため、税理士任せになりやすく、数字の裏を見抜けない。

営業マンも顧客も、双方が「今期の利益を圧縮したい」という利害で一致する。
だがそこには、本来の経営目的――企業の成長・安定・雇用維持――は存在しない。

こうして、“節税依存症”が企業文化として根付いていく。
結果、キャッシュフローは枯渇し、残るのは使わない資産と見えない負債だけ。
経営者自身が「節税をやめたら損する」と錯覚し、永遠に営業の餌食となる。

これは単なる会計問題ではなく、企業の意思決定力を奪う病理である。

本来の節税とは何か

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節税とは「税金を減らすこと」ではなく、「適正な納税で利益を最大化すること」である。
それを忘れた瞬間、節税は自己目的化し、企業は自らの首を絞める。

両替機も、保険も、倉庫も、本業に必要なら意味がある。
だが“節税のためだけ”に導入するなら、それは単なる金の浪費だ。

そもそも国税庁がスキームを次々に封じるのは、制度を悪用する行為が経済全体を歪めるからである。
節税競争が続けば、誠実に納税する企業が馬鹿を見る構造になる。
それを是正するために通達改正が繰り返されている。

つまり、節税の追求は本質的に「負け戦」である。
勝ち続ける者はいない。制度は常に変わり、逃げ道は必ず塞がれる。

節税保険も出口を間違えるとただの繰り延べにしかなりませんよね。

節税に依存しすぎると本末転倒になります。節税よりも本業を伸ばして、その中で利益を残せる仕組み作りをしよう。
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■ 結論:節税という“依存症”からの脱却

両替機や太陽光、保険やコインランドリー――
節税の名のもとに販売されるあらゆる商品は、短期的な安心を与えるだけで、長期的には企業を弱体化させる。

本業と関係のない投資に資金を投じ、税金を減らしたところで、
企業の競争力は1円も増えない。

節税を追う者は、税制に追われる。
制度の隙を探す営業と、救いを求める経営者のイタチごっこに終わりはない。

本来の経営とは、「払うべき税を払い、それでも利益を残せる仕組みを作ること」だ。
そこに知恵と努力こそがあり、節税トリックには存在しない“実力”が生まれる。

節税は一瞬の安堵を与えるが、信頼と時間を奪う。
そして最終的に、自らの企業を“節税ビジネスのカモ”に変えてしまう。

もう、節税で会社を救う時代は終わった。
これから必要なのは、「納税で会社を強くする」という発想の転換である。

著者プロフィール

K2編集部
K2編集部
投資家、現役証券マン、現役保険マンの立場で記事を書いています。
K2アドバイザーによって内容確認した上で、K2公認の情報としてアップしています。

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