こんにちは、K2 College編集部です。
近年、日米欧の賃金格差が拡大しており、日本は特に賃金の停滞が顕著です。米国や欧州諸国では、経済成長や労働市場の変化に伴い賃金が上昇している一方、日本は長引くデフレーションや非正規雇用の増加などにより、実質賃金が停滞しています。この賃金格差は、労働生産性、労働市場の構造、インフレーション、政策対応など多岐にわたる要因によって形成されています。以下では、具体的なデータを用いて日米欧の賃金格差の現状を詳しく解説します。
日本の正社員より海外のアルバイトの方が稼げるというニュースを見たことがあります。
「負の30年」と言われていますが、日本はバブル崩壊後から長期の不景気状態でデフレが続いています。
- 賃金水準の推移と現状
- 労働生産性の違い
- 労働市場の構造と雇用形態
- 物価上昇と賃金上昇の関係
- 政策対応と企業の賃金戦略
賃金水準の推移と現状
日本
日本の平均年収は、2021年時点で約443万円(約32,500ドル)です。名目賃金はわずかに上昇しているものの、実質賃金の伸びは停滞しています。1997年から2021年にかけて、日本の実質賃金は約7%低下しました。非正規雇用者の増加(全労働者の約40%)が賃金水準の押し下げ要因となっています。
米国
米国の平均年収は、2021年で約70,000ドル(約977万円)に達し、日本の約2.2倍の水準です。特にITやサービス業が賃金上昇を牽引し、2020年以降のインフレ率の上昇も賃金に反映されています。2021年の実質賃金は、前年同期比で約4.6%増加しました。
欧州
欧州では、賃金水準に国ごとの差がありますが、全体として上昇傾向にあります。ドイツの平均年収は約45,000ユーロ(約600万円)、フランスは約39,000ユーロ(約520万円)と報告されています。2021年の欧州全体の賃金増加率は約3%でしたが、特にドイツやフランスは安定的な賃金増加が見られます。
米国とは2倍以上の差があるんですね。
日本も金額自体は微増していますが、それ以上に生活コストが上がっているので実質賃金は下がっていることも大きな問題です。
労働生産性の違い
日本
日本の時間当たり労働生産性は、2021年時点で49.5ドルであり、OECD加盟38カ国中27位です。特にサービス業の生産性が低く、経済全体の労働生産性を引き下げています。長時間労働の慣行が効率性の向上を妨げているとも指摘されています。
米国
米国の時間当たり労働生産性は85ドルで、OECD加盟国中でもトップクラスです。ITや金融など高付加価値産業の発展が、生産性向上の主要因です。労働生産性の高さが賃金上昇を支えており、企業の競争力を強化しています。
欧州
欧州では、ドイツの時間当たり労働生産性が68ドル、フランスが70ドルと高い水準にあります。北欧諸国も労働生産性が高く、労働市場の柔軟性と技術革新が寄与しています。一方、南欧諸国では生産性の向上が遅れ、賃金上昇に繋がりにくい状況です。
生産性でも同じ様な水準ですね。
長時間労働の習慣が改善すれば生産性自体は高めることができそうです。
労働市場の構造と雇用形態
日本
日本の労働市場は、非正規雇用の割合が約40%と高く、非正規雇用者の賃金は正規雇用者の約60%に留まっています。また、年功序列型賃金制度が依然として根強く、労働市場の流動性が低いことが賃金の停滞に繋がっています。
米国
米国は労働市場の柔軟性が高く、成果主義に基づく賃金体系が一般的です。フリーランスや契約社員の割合が増加し、労働者は高い賃金を求めて頻繁に転職します。この市場の流動性が賃金上昇を促しています。
欧州
欧州は、正規雇用者の割合が高く、労働者保護が強い特徴があります。例えば、ドイツでは非正規雇用者の割合が約25%と、日本よりも低いです。労働組合の活動も活発で、賃金交渉が行われやすい環境にあります。
非正規雇用の割合はダントツで日本が高いですね。
そして年功序列や賃金交渉をしないという文化も助長しています。
物価上昇と賃金上昇の関係
日本
日本の消費者物価指数(CPI)は、2021年で前年比0.1%と、ほぼ変動がありません。物価上昇率が低いため、企業は賃金を大幅に引き上げる動機に欠けています。一方、2022年以降は円安やエネルギー価格の上昇により、インフレが進行しているものの、賃金の伸びは依然として鈍化しています。
米国
米国では、2021年のインフレ率が6.7%と高く、これに伴い名目賃金も上昇しました。労働市場の逼迫も相まって、企業は労働者を確保するために賃金を引き上げています。実質賃金も上昇傾向にあります。
欧州
欧州の2021年のインフレ率は約2.6%で、ドイツやフランスなど主要国は物価上昇に合わせて賃金も引き上げています。特に最低賃金の引き上げが、低所得者層の賃金改善に寄与しています。しかし、南欧諸国ではインフレが賃金上昇を上回り、実質所得の低下が課題となっています。
日本ではインフレになっていませんが、物の値段は上がっていますよね。
それは円安によって輸入コストの増加が要因です。
政策対応と企業の賃金戦略
日本
日本政府は「賃上げ促進税制」などを導入し、企業に賃金引き上げを促しています。しかし、企業側の対応は限定的で、特に中小企業は利益率が低いため賃上げが難しい状況です。大企業も内部留保を重視し、賃金引き上げへの反応は慎重です。
米国
米国政府は最低賃金の引き上げや労働者保護の強化を推進しています。企業はインフレ率の上昇や労働力不足に対応するため、積極的に賃金を引き上げています。特にIT企業や金融機関は高い利益率を背景に、賃金上昇を実施しています。
欧州
欧州では、最低賃金の引き上げが労働者保護の一環として行われています。ドイツは2022年に最低賃金を12ユーロ(約1,560円)に引き上げ、フランスも最低賃金の年次調整を行っています。企業も社会的責任を果たすために、賃金の適正化を進めています。
「賃上げ促進」をしても強制ではないのでなかなか実行はされないですよね。
まずは労働生産性を高める仕組みづくりや労働環境を整備することが必要かもしれないですね。
まとめ
- 日米欧の賃金格差は、労働生産性、労働市場の構造、インフレーション、政策対応などが要因
- 米国や欧州では経済成長とインフレーションが賃金に反映
- 日本はデフレーションや非正規雇用の増加により賃金の停滞が続いている
この格差を是正するためには、日本において労働生産性の向上、労働市場の柔軟化、企業の賃金戦略の見直しが必要です。さらに、政府の政策が実効性を持つよう、企業と労働者が協力して持続可能な賃金上昇を実現する取り組みが求められます。賃金格差の縮小は、経済成長と社会の安定に寄与するため、各国がそれぞれの課題に取り組むことが重要です。
著者プロフィール
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投資家、現役証券マン、現役保険マンの立場で記事を書いています。
K2アドバイザーによって内容確認した上で、K2公認の情報としてアップしています。
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