1987年のブラックマンデーを正確に予測し、一躍伝説となったヘッジファンドマネージャー、ポール・チューダー・ジョーンズ氏が、2025年5月6日、再び「市場の暴落は避けられない」と強い警告を発しました。
彼の発言は、米国の通商政策やインフレ長期化といった構造的リスクを背景に、株式・債券の伝統的資産配分が限界を迎えつつあることを示唆しています。
また、世界最大級のヘッジファンドを率いたレイ・ダリオ氏も、「米国は今後、債務危機を免れない」との見方を示し、金やビットコインの重要性を語っています。
今回は、この二人の巨頭の警告と、今後の資産防衛における現実的な選択肢について整理します。
- 伝説の投資家が再び警鐘 ― ポール・チューダー・ジョーンズ氏の最新警告
- 実物資産への逃避 ― 金・ビットコイン・コモディティに注目
- レイ・ダリオ氏も警告 ― 債務危機を回避するのは「不可能」
伝説の投資家が再び警鐘 ― ポール・チューダー・ジョーンズ氏の最新警告

1987年のブラックマンデーを事前に予測し伝説となった投資家、ポール・チューダー・ジョーンズ氏が、2025年5月6日のCNBCインタビューで再び市場に警鐘を鳴らしました。
ジョーンズ氏は「2025年末までに米国株式市場は新たな安値を更新する可能性が高い」とし、特に2つの構造的リスクを強調しています。
第一のリスクは、トランプ政権による通商政策です。中国製品への最大145%の関税導入など、保護主義的な姿勢は輸入物価の高騰を招き、インフレ圧力をさらに強めます。加えて、景気の減速やサプライチェーンの混乱といった副作用も無視できません。
第二のリスクは、インフレが依然として高止まりしている中での金融政策の制約です。FRBは利下げに踏み切れない状況にあり、「高金利の長期化」が企業業績や消費に冷や水を浴びせ、市場を圧迫する構図です。
こうした環境下で、従来の「株式+債券」戦略が通用しにくくなることを示唆しています。
FRB(連邦準備制度理事会)は、本日、利下げを見送り、政策金利を据え置くことを決定したと発表しましたね。
パウエル議長は、トランプ政権の通商政策の方向性が明確になるまで、利下げを急がない考えを明らかにし、「関税が予定されている水準どおり導入された場合、少なくとも今後1年間は目標に向かって前進することはないだろう」とも述べていましたね。
実物資産への逃避 ― 金・ビットコイン・コモディティに注目

ジョーンズ氏はこのような環境下において、「伝統的な安全資産である長期国債はもはや避難先として機能しない」と断言しています。米国の財政赤字は膨張し続け、債務増加のスピードに対して金融政策が後手に回っている今、国債の信用性にも懸念が広がっています。
その代替手段として、ジョーンズ氏が投資先として挙げたのは「金(ゴールド)」「ビットコイン」「商品(コモディティ)」です。
これらの資産は、通貨や政府の政策に依存しない価値を持ち、不安定な時代における実物資産としての魅力が高まっています。
私も、先般の記事『ドル不足とドル安の矛盾:資金が向かう“最後の避難先”とは』の中で同様の視点を述べておりますが、金や銀は、国家の信用リスクから独立した価値を持ち、歴史的にも「最後の逃避先」として機能してきております。
また、エネルギー・資源・食料といったコモディティや、安定収益を生むインフラ資産も、有力なポートフォリオの分散先です。ジョーンズ氏の発言は、これら実物資産の重要性を改めて確認させるものでしょう。
私の周りの投資家は、S&P500やオールカントリーだけにしか投資していない人が多いですが、大丈夫でしょうか?
確かにスタート地点としては悪くありません。
しかしながら、それを最終解として盲信するのは危険です。
長期で資産を守るには、複数の資産クラスへの分散や、出口戦略や相場の変化に応じた調整が欠かせません。
レイ・ダリオ氏も警告 ― 債務危機を回避するのは「不可能」

ポール・チューダー・ジョーンズ氏と同様に、世界的なヘッジファンド「ブリッジウォーター・アソシエイツ」の創業者であるレイ・ダリオ氏も、近年の市場リスクに対する警告を強めています。
ダリオ氏は、「米国が今後数年間で債務危機に陥らずに済むことはもはや不可能に近い」と発言。政治的分断、膨張する財政赤字、高水準の政府債務が複合的に重なり、経済の持続性に深刻な懸念を示しています。
彼の見解によれば、中央銀行が財政問題を補う形で通貨を増発すれば、結果として通貨の価値は下落し、インフレと信用不安が同時に進行する「スタグフレーション」に直面する恐れもあるとのことです。
こうした背景から、ダリオ氏も金やビットコインといった「実物的な価値を持つ資産」への投資を提案しています。
これは、ジョーンズ氏の提言と完全に一致しており、歴史的に実績のある二人の著名投資家が同時期に「実物資産」への移行を訴えている点は重く受け止めるべきでしょう。
投資家にとっては、単なる一時的なヘッジではなく、「資産保全の中核」としての再配置が求められている局面なのかもしれません。
一般投資家として、どうすれば良いのでしょうか?
ポートフォリオ変更をして、投資先として組み入れれば良いですよ。
こちらからご相談ください。
著者プロフィール

-
投資アドバイザー
愛知大学経済学部卒業
大手旅行会社で10年間、その後、企業の人材育成を支援する会社で約6年間、法人営業として経験を積む。
直近約5年半はキャリアコンサルタントとして、転職希望者の相談や企業の採用に一役を担う。
その傍らで、自らの投資経験を踏まえたファイナンシャルアドバイスを開始。
ファイナンシャルプランナー2級も取得。
自分でしっかり考える投資家をサポートするという経営方針に共感し、自らもかねてから顧客であったK2 Collegeに参画。
最近の投稿
コラム2025.05.08米国経済の危機と「最後の逃避先」
コラム2025.04.30ドル不足とドル安の矛盾:資金が向かう“最後の避難先”とは
コラム2025.04.28アメリカはなぜ高金利を維持せざるを得ないのか?―米国債とインフレ、そして投資家の備え
コラム2025.04.25「様子見」を続けるあなたへ──“今じゃない”を繰り返す人が見落としている投資の真実
この投稿へのトラックバック: https://media.k2-assurance.com/archives/30707/trackback