現物金の椅子取りゲームが行われている

こんにちは。K2 College大崎です。

先般、英国に保管されている金塊を米国に移送する動きが加速しているとの記事を書きましたが、英国からの現物金の流出の動きは止まりません。

超富裕層も「現物金の椅子取りゲーム」に参加し始めており、このゲームに気づいた投資家が次々と現物の引き渡しを要求する動きが強まっています。

わたくしはかねてより、資産防衛として資産全体の10~15%くらいは、現物で所有することをお勧めしてきておりますが、すでに金の現物を所有している方は、「現物金の椅子取りゲーム」に参加する必要はなく、高みの見物ですね。

  • 動画解説
  • ロンドン市場の現物不足の原因
  • 金の現物はペーパーゴールドに比べて500分の1程度しかない
  • 今後の展開(金価格上昇)

動画解説

ロンドン市場の現物不足の原因

現物の引き出し要求の増加(ペーパーゴールドの信用不安)

これまでペーパーゴールド(先物やETFなど)の取引が中心だった市場では、実際に金を引き出す人は少なかったため、現物の在庫は相対的に少なくても問題になりませんでした。

しかし、最近の地政学リスク(ロシア・中国の金買い増し、BRICS諸国の金準備増加など)や、金融市場への不信感から「本物の金を手元に置いておきたい」という需要が高まっています。

その結果、ロンドン市場に保管されている金を引き出そうとする動きが増加し、実際の金の供給が追いつかなくなっている可能性があります。

特に、多くの中央銀行、特にBRICS諸国と連携する中央銀行は、米国債の保有を積極的に減らし、金を蓄積する動きを強めているため、ロンドン市場からの金流出が加速しています。

中央銀行・大口投資家による現物の買い占め

近年、特に中国やロシアなどの中央銀行が金の現物を大量に購入しており、市場に流通する金の量が減少しています。さらに、一部のヘッジファンドや超富裕層も「現物の金を確保する動き」を強めており、金融市場ではなく個人や政府が金を保管するケースが増えています。

特に、BRICS諸国を中心に脱ドル化の動きが進んでおり、西側諸国の金庫に金を保管するのではなく、自国で準備金を直接所有する方針を取る国が増えています。

これにより、ロンドン市場の金地金銀行から現物の金が大幅に流出し、金の需給バランスがさらに逼迫しています。

金の供給サイドの制約(精錬所・鉱山の生産量減少)

金の採掘量は年々減少傾向にあり、新たな供給が増えにくい状況です。さらに、ロシア産の金が制裁の影響で西側市場(ロンドン)に供給されにくくなっており、供給不足が悪化しています。

また、多くの国が米ドル依存を低減するために、金準備を自国で直接保有する動きを強めています。この脱ドル化の取り組みにより、ロンドンの金地金銀行からの現物流出が加速し、市場での供給量が減少しています。

大崎さんは、世界の中央銀行が金を蓄積する動きを強めているため、我々も資産の10~15%を金の現物で保有するというのも理にかなっていると述べられてきておりましたが、まさに資産防衛のためにそうした方が良い状況となってきておりますね。

そうですね。
お伝えしておりますように「普通の人ができる資産防衛手段として、金を現物で保有するのが良い」ですね。

金の現物はペーパーゴールドに比べて500分の1程度しかない

金の現物価格とペーパー価格の乖離

通常、金の価格は「先物市場(ニューヨークCOMEX)」と「現物市場(ロンドンLBMA)」で連動していますが、現物の不足が深刻化すると、現物市場の価格が急騰する可能性があります。すでに中国・インドなどの現物市場では、西側市場(ロンドン・ニューヨーク)よりも高値で取引されるケースが増えています。

この乖離が拡大すれば、ペーパーゴールド市場の信用が揺らぎ、さらなる現物引き出しが加速するリスクがあります。特に、金のペーパー市場全体の規模は、現物市場に比べて500倍の規模と推定されており、この不均衡が価格の急激な変動を引き起こす要因となっています。

ペーパーゴールド市場の混乱

COMEXやLBMAで金の引き渡しに対応できないケースが増えれば、信用不安が広がり、「金を持っていないのに取引している」状況が露呈します。これにより、大口投資家がペーパーゴールドを手放し、現物を確保しようとする動きが加速する可能性があります。

特に、COMEXの先物市場では、現物1トンに対してその100~200倍の取引が行われており、これが市場の不安定性を高める要因になっています。現物の引き渡しが追いつかない場合、価格の急騰や先物市場の混乱が避けられないでしょう。

金の現物とペーパーゴールドの違い

金には「現物(フィジカルゴールド)」と「ペーパーゴールド(紙の金)」があり、ペーパーゴールドは金の価格に連動する金融商品(先物、ETF、スワップ契約など)を指します。ペーパー市場では、大量の取引が行われていますが、実際に現物が引き渡されるケースはごく一部に限られています。

このため、ペーパー市場の取引量に対して現物供給量が極端に少なく、500分の1程度しかないとの推計もあり、市場全体のバランスが大きく崩れるリスクが指摘されています。

「金を持っていないのに取引している」状況が露呈してきているわけですね。

そうですね。

それでペーパーゴールドを手放し、現物を確保しようとする動きが加速しており、イングランド銀行の金庫に保管されている金塊への需要が殺到し、引き出しに数週間を要する事態になっています。

今後の展開(金価格上昇)

短期的な金価格の急騰リスク

現物の金不足が続けば、短期的に金価格が急騰するリスクが高まります。これまで金価格はペーパー市場(COMEXやLBMA)での取引によってコントロールされてきましたが、現物市場が逼迫すれば、金価格は本来の供給需給を反映し始める可能性があります。

特に、ロンドン市場における現物の引き出し要求が増加し、供給が追いつかなくなれば、ペーパー市場の信用が揺らぎ、価格の大幅な上昇が避けられないでしょう。

「現物金の椅子取りゲーム」の激化

超富裕層も「現物金の椅子取りゲーム」に参加し始めており、このゲームに気づいた投資家が次々と現物の引き渡しを要求する動きが強まっています。これまでペーパーゴールドで取引していた投資家の中でも、現物の供給制約を認識し、保有資産をペーパーからフィジカルへシフトさせる流れが加速しています。

中央銀行の金蓄積が続く中、特にBRICS諸国が米国債を減らし金を備蓄する動きを見せているため、金地金銀行からの現物流出が進み、残された金を奪い合う形となっています。この「椅子取りゲーム」において、先に行動した投資家が有利となるため、現物市場の競争はさらに激化すると予想されます。

長期的な金市場の構造変化

金市場では、長期的に現物とペーパーゴールドの乖離が拡大し、従来の市場構造が変化する可能性があります。

ペーパー市場が信用を失い、現物市場の価格が主導権を握るようになれば、

· 中央銀行や大口投資家が保有する金の価値が一層高まる
· 一般投資家の間でも「現物志向」が強まり、ETFよりも金地金の需要が増加
·金の取引において、保管証明の信頼性がより重視される

といった変化が進むでしょう。

日本貴金属マーケット協会代表理事の池水雄一氏が東洋経済オンラインでのインタビューで、金価格は2030年までに5,000ドルぐらいは十分ありうると述べておりましたたが、そこまで上昇するでしょうか?

その可能性はあると思いますが、今後の金市場では、現物を確保した投資家が大きな利益を得る構造になっていくかもしれませんね。

まとめ

  • ロンドン市場の金不足は、ペーパーゴールド市場の信用不安が高まり、現物の引き出しが急増している
  • 特に中央銀行・大口投資家による現物買い占めが加速しており、市場に流通する金の量が減少している
  • 今後、金価格の上昇やペーパーゴールド市場の混乱が起こる可能性があり、実物資産としての金の価値が再評価されるかもしれない。

著者プロフィール

大崎真嗣
大崎真嗣
投資アドバイザー

愛知大学経済学部卒業
大手旅行会社で10年間、その後、企業の人材育成を支援する会社で約6年間、法人営業として経験を積む。
直近約5年半はキャリアコンサルタントとして、転職希望者の相談や企業の採用に一役を担う。

その傍らで、自らの投資経験を踏まえたファイナンシャルアドバイスを開始。
ファイナンシャルプランナー2級も取得。

自分でしっかり考える投資家をサポートするという経営方針に共感し、自らもかねてから顧客であったK2 Collegeに参画。

この投稿へのトラックバック: https://media.k2-assurance.com/archives/28484/trackback